はるかな昔、この世には悪魔がいました。

悪魔は、恐怖にひきつる人の顔を見るのが

何よりも好きでした。

人を見つけては、

だまし、襲い、喰らって

楽しく過ごしていました。

ところがある時、

あまりにも殺しすぎたために

人がほとんどいないということに気づきました。

悪魔はあせりました。

「このままでは楽しみがなくなってしまう！」

悪魔は世界中を探しに探して

唯一生き残った男の子と女の子を見つけ出しました。

悪魔はこの赤ん坊達を育てることにしました。

悪魔が大事に大事に育てたため、

二人はすくすくと大きくなり、

やがて多くの子を産み、

その子ども達はさらにたくさんの子どもを産み、

そうしてまた人々は増えていきました。

悪魔は狂喜しました。

「またたくさん殺せる！楽しめるぞ！」

ところが人々はおかしなことを言い始めました。


おお　神よ
我々を大いなる愛で見守ってくれた
偉大なる神よ


悪魔がいくらだまし、襲い、殺しても、

こんなことしか言いません。


おお　神よ
これは試練なのですね

そうして長い月日が過ぎ、

人々が全く恐れてくれないので

退屈してしまった悪魔はまるで老人のようになってしまいました。

おわり